戦争と株式市場:過去の教訓から学ぶ投資判断

世界の歴史において、戦争や武力衝突は常に経済と金融市場に大きな影響を与えてきました。不確実性が高まる中、投資家にとっては「買いの好機」なのか、「様子見が賢明」なのか、その判断は非常に難しいものです。

本コラムでは、過去の戦争と株式市場の関係を紐解きながら、戦時下における投資判断のヒントをお伝えします。

  • 戦争と経済の関係

戦争が発生する前後の経済や市場は、段階によって異なる動きをみせます。

◇戦争懸念が高まる

不安心理が広がり投資を控えるムードとなる → 株安、原油・金が上昇

◇開戦直後

不透明感がピークに → パニック的な売りで株価は下落

◇戦局が安定してくる

先行きの見通しが出てくる → 株式は回復基調に

◇終戦や和平の兆し

リスクオンに転じる → 株式市場は上昇へ

このように、市場は「不確実性」に対して非常に敏感であり、特に開戦直後はボラティリティが高まる傾向にあります。

  • 歴史的な事例:代表的な戦争と株価の推移

過去の具体的な事例を見ることで、どのような市場の動きがあったかを知ることができます。

■ 湾岸戦争(1990〜1991)

イラクのクウェート侵攻により、開戦前に米国株は大幅下落。

しかし開戦後、短期で終結するとの期待から反発。

■ イラク戦争(2003年)

戦争懸念で株価下落 → 開戦と同時に上昇トレンドに転換。

株式市場は「不確実性の払拭」に反応した好例。

■ ロシア・ウクライナ戦争(2022年〜)

侵攻直後、日米欧の株式は下落。

エネルギー・資源価格が急騰し、インフレ懸念が台頭。

ただし米国株などはその後回復し、むしろ資源・防衛株が堅調。

  • 戦争時における投資戦略の考え方

「戦争=株安」というイメージがあるかもしれませんが、すべてのケースに当てはまるわけではありません。重要なのは、戦局の見通しと市場の反応を冷静に捉えることです。

◎買いが検討できるケース

株式市場が過剰反応し、割安になっている場合

戦局が短期決着と見られるとき

経済の基盤が強固で企業収益が維持されている場合

× 投資を控えるべきケース

戦争が長期化し、経済活動に深刻な影響を及ぼす懸念がある

エネルギーや食料の価格高騰によるスタグフレーションの可能性が高い

戦地や当事国周辺が経済・貿易の中枢を担っている

次回のコラムではこれらを参考に、戦争時に強いセクター・弱いセクター、また「有事は買い」なのかどうかを、より具体的に説明していきます。