眠れる資産を呼び覚ませ。「企業型DC」の真価とプロが実践する勝者の運用術

前回は、企業型DCが「会社のお金で、自分が運用する年金」であることを解説しました。今回は、他の退職金制度との決定的な違いと、加入者であるあなたが享受できるメリット、そしてプロとして提言したい「賢い活用法」についてお話しします。

1. ライバル制度との比較 —— 「守り」の中退共・DB、「攻め」のDC

退職金制度にはいくつかの種類がありますが、よく比較されるのが「中退共(中小企業退職金共済)」と、最近注目を集める「はぐくみ基金」などに代表される「DB(確定給付企業年金)」です。これらを投資の格言で分類するなら以下のようになります。

  • 中退共(守りの王道): 国が助成する制度で、掛金と納付月数に応じて退職金額が【あらかじめ決まっている】のが特徴です。元本割れのリスクがほぼない代わりに、インフレで現金の価値が目減りしても、それ以上に大きく増えることはありません。あくまで「貯蓄」の延長です。
  • DB/はぐくみ基金など(安定の約束): これも給付額が約束されている制度です。運用は基金や企業が行うため、従業員に運用の手間やリスクはありません。近年人気の「はぐくみ基金」などは、元本保証に近い安定運用を目指しており安心感は抜群ですが、裏を返せば、世界経済が好調で株価が2倍になっても、あなたの退職金が2倍になるわけではありません。
  • 企業型DC(攻守自在の剣): 唯一【運用益が青天井】になり得る制度です。もちろん元本割れのリスクは自分持ちですが、世界経済の成長を取り込み、退職金を「給料の数年分」以上の価値に育て上げることができるのは、DCだけです。

2. 従業員(加入者)のメリット —— 驚異の「税制優遇トライアングル」

なぜ私がこれほどDCを推すのか。それは、投資の世界において最強のブースト装置である【税制優遇】が3段階で効いてくるからです。

  1. 運用益が全額非課税 通常、投資で利益が出ると約20%の税金が引かれますが、DCなら0%です。利益が利益を生む「複利効果」を最大化できるため、長期になればなるほど、NISA同様に資産の伸び方が劇的に変わります。
  2. 受取時の控除(退職所得控除) 受け取る際も、「退職所得控除」という大きな非課税枠が使えます。勤続年数が長ければ、数百万〜数千万円単位で税金がかからずに現金化できる可能性があります。
  3. マッチング拠出(可能な場合) 会社が出す掛金に上乗せして、自分の給与からも掛金を出せる場合、その分は全額が「所得控除」となり、毎年の所得税・住民税が安くなります。

3. プロが教える「賢い活用法」 —— 「定期預金100%」は緩やかな自殺行為

残念なことに、日本のDC加入者の多くが、運用商品を「定期預金・保険(元本確保型)」に設定したまま放置しています。ストラテジストとして断言します。これは「リスクゼロ」ではなく、「インフレ負け」という確実な損失を選んでいるのと同じです。

これからの時代、モノの値段(物価)は上がり続けます。金利0.01%の定期預金では、実質的な資産価値は目減りする一方です。

【プロの処方箋】 企業型DCこそ「全世界株式(オールカントリー)」「外国株式」など、リスクを取って成長を取りに行く資産に配分すべきです。なぜなら、以下の理由があるからです。

  • 長期投資の恩恵: 退職までは引き出せないため、強制的に「長期投資」になります。長期であればあるほど、株式市場の一時的な暴落リスクは平準化され、世界経済の成長リターンに収斂しやすくなります。
  • 非課税メリットの最大化: 期待リターンが高い商品ほど、非課税の効果(節税額)が大きくなります。ローリターンの定期預金で非課税枠を使うのは、宝の持ち腐れです。

結論

会社が用意してくれたこの「最強の投資口座」を、ただの貯金箱にしてはいけません。ログインパスワードを探し出し、今すぐポートフォリオ(配分)を見直してください。それが、あなたの豊かな老後への第一歩です。