イラン戦争が経済に与える影響

まず「なぜイランが経済に効くのか」を押さえる

一言でいうと「ホルムズ海峡」がすべてのカギです。

ホルムズ海峡はペルシャ湾とインド洋をつなぐ水路で、世界の原油供給の約2割に当たる原油がここを通ります。そしてその多くはアジア向けです。日本に至っては原油輸入の約94%を中東に依存しており、それに用いられるタンカーの約8割がホルムズ海峡を通ります。

イラン政府は封鎖していないと説明していますが、革命防衛隊が通過禁止を通告したため、リスクを回避するために民間船舶は航行を見合わせており、事実上の封鎖状態にあります。

国際エネルギー機関(IEA)は「中東の戦争は、世界の石油市場史上最大の供給混乱を引き起こしている」と述べ、ホルムズ海峡の流通量は90%以上落ち込んだと推計しています。


① 物価への影響(一番身近)

原油価格が約30%上昇した場合、ガソリン価格はほぼ同じ幅で上昇し204円になることが予想されます。電気代は6%程度、ガス代は2〜3割程度上昇する傾向があります。

日用品では、原油から直接作られる製品の上昇幅が大きく、洗剤は9.6%、シャンプーは6.8%上昇することが予想されます。野菜・肉なども輸送コスト上昇を通じて約1.8%の価格上昇が見込まれます。

② 株価への影響

ホルムズ海峡の事実上の封鎖が原油供給を制約することへの警戒感が高まっており、原油高騰がコストアップ要因になるという連想も株価下落圧力を働かせています。

ただし、野村のストラテジストによれば、原油価格の10%上昇が1年間続いた場合でも、TOPIXベースの経常利益を1〜1.25%押し下げるという影響にとどまります。つまり、短期間で収束するなら壊滅的ではありません。長期化するかどうかが分岐点です。

③ 為替・金利への影響

原油高はインフレリスクをもたらしますが、有事のドルという流れで若干のドル高・円安に動いています。日銀は景気の下振れリスクから追加利上げをより慎重にせざるを得ないでしょう。円安傾向と利上げ見送りが重なれば、原油高から物価上昇へ向かう作用がさらに助長されます。


金融コンサル目線での「見るべきポイント」3つ

① 戦争がいつ終わるか ── 米国防総省は対イラン戦争の完了には4〜6週間かかるとみており、予定より早いペースで進んでいると説明しています。短期終結ならショック吸収、長期化なら本格的なオイルショックへ。

② ホルムズ海峡が正式に開くか ── 現在は「事実上の封鎖」であり、イランは正式封鎖を宣言していません。正式封鎖に踏み切れば原油価格が140ドル超、日本のGDPが3%弱下押しされる可能性もあります。

③ サウジ・UAEの油田への被害 ── イラン側がサウジやUAEの石油施設に報復攻撃を行っており、イラン以外の産油国からの供給も不安定化しています。ここへのダメージが拡大すると、影響は一段と深刻になります。

結論として、今の段階では「物価が上がり、株が少し下がる」レベルですが、戦争が長引くほど1970年代のオイルショックに近い状況へ移行するリスクがあります。個人としては、エネルギー株・金(ゴールド)が相対的に強い局面であることと、円安が続きやすい環境であることを念頭に置いておくと良いでしょう。

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