
理想的アセットアロケーションを深掘りする
──米国大学基金(エンダウメント)の運用哲学に学ぶ──
1.米国大学基金(エンダウメント)とは?
米国では大学の学費を抑え、優秀な学生が経済困窮しないよう、寄付金などを元手にして運用を行っているのはご存知でしょうか?
その「寄付を元手にした運用型の大学基金」のことを米国大学基金(エンダウメント)といいます。
もちろん、大学の将来に関するお金ですので、元本を減らすことは抑えなければなりません。
しかしこの手堅い運用でも米国大学基金では年7~8%で運用しているのです。
どのような運用をしているのか、皆さん興味はありませんか?
2.エンダウメントが【株40%以下】でも年7〜8%を狙える理由
ハーバードやイェールの長期運用報告書を読むと、株式比率は30〜40%台と意外に低くなっております。それにもかかわらず、目標リターンはインフレ+5%(年7〜8%)です。その運用の鍵は「相関係数」と「リスク・プレミアム」の2語に尽きます。
-相関係数-
資産 | 期待リターン | 株式との相関 | 役割 |
国内外株式 | 高 | 1.0 | 成長エンジン |
公社債 | 低~中 | ▲0.2~0.3 | 下落クッション |
物価連動債 | 中 | ▲0.1 | インフレヘッジ |
REIT/インフラ | 中 | 0.4 | インカム+実物代替 |
コモディティ | 中 | 0.1 | インフレ対応 |
PE・VC・HF | 高 | 0.3~0.6 | 非上場プレミアム |
相関の低い資産を複数合わせると、ポートフォリオ全体のブレ幅(標準偏差)が下がり、同じリターンをより低いリスクで達成できる──これが平均分散モデルのコア発想です。
3.長期保有を前提に【流動性バケツ】をつくる
大学基金は期限を意識しない超長期マネーです。しかし学費支出など短期的なキャッシュも必要となります。
そこで ①流動性バケツ(上場株・債券)②準流動バケツ(上場REITなど)③非流動バケツ(PE/不動産ファンド等) に分け、常に1〜2年分の支出を①で確保しつつ、残りを長期成長資産に振り向けます。
リタイア世帯や法人オーナーも「生活費3年分は国債・MRFで確保 → 残りで分散」を応用できます。
-個人投資家版『エンダウメントモデル』例-
◇アグレッシブ型(期待リターン6〜7%)
上場株 35%(日本10/米20/新興国5)
投資適格債 15%
ハイイールド債 5%
物価連動債 10%
上場REIT・インフラ 10%
コモディティETF 10%
オルタナ(PE二次・上場HF ETF等)15%
◇ディフェンシブ型(期待リターン4〜5%)
上場株 25%
投資適格債 30%
物価連動債 15%
上場REIT 10%
コモディティETF 5%
キャッシュ・短期債 15%
★ポイント
上場ETFでほぼ再現可(東証ETF+米国ETF)。
日本居住者は為替ヘッジの有無も設計に入れる。
年1回のリバランスで【逆張り】を自動実装。
4.実践前に押さえたい「3つの落とし穴」
流動性リスク:PE・非上場不動産は途中解約不可。比率は総資産の20〜30%内に収めましょう。
手数料と税コスト:オルタナティブは信託報酬が高め。税制優遇(NISA等)も併用してくことがオススメです。
メンタルギャップ:下落局面でリバランス買い増しを機械的に行える仕組み作りが肝心となります。
5.まとめ「守りながら増やす【分散こそ最大効率】」
同じ年7%のリターンを目指すなら、株70%の一本足より、株40%+異なるリスク・プレミアム60%のほうが道中のブレは小さい。
これはエンダウメントが実証してきた金融工学のエッセンスです。
退職金や事業売却益、あるいは法人内部留保──「減らしたくないが、眠らせたくない」資産こそ、長期×分散のロジックを武器に【安定と効率】を両取りしましょう。
GBFアドバイザーズでは FA・FPの2名体制で、目的・期間・税制まで踏まえたカスタム配分をご提案します。自分仕様のエンダウメントモデルを組みたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。